簿記検定・税理士受験生の常識バイブル-第4回-

チェック

年々難しくなる試験対策

いつの時代の受験生も昔は簡単で誰でも合格できると愚痴をこぼしがちになりますが、本当に昔に受験すれば合格しやすいのでしょうか?

  • 試験範囲は増えたのか
  • 難易度は本当に上がったのか
  • 受験生の質は変わったか
  • 合格率は減っているのか
  • 専門学校の試験対策

過去のバックナンバー

本試験を解く前にやって欲しいこと、絶対にやってはいけないことなど特集。

税理士試験の科目選択についての特集。

税理士試験の1日の勉強時間ついての特集。

試験問題の難易度が過去と比較して上がっているのかについての特集。

日商簿記検定1級と税理士試験簿記論はどちらが難しいかについての特集。

  • 第6回
  • 古いテキストはそのまま使えるのかについての特集。

    参考(廃刊)

    旧税理士受験生の独り言廃刊になりましたが、参考ということで残しておきます。



    試験問題の難易度が上がってる?


    簿記検定や税理士試験の受験勉強をされた方ならご存じだと思うのですが、年々内容が高度になり試験範囲も膨れ上がってなかなか試験範囲をカバーするのが難しくなっているのではと感じていると思います。

    もちろん科目によっても違いはありますが、基本的に試験範囲は拡がっているとみて差し支えはないように思います。また、内容も非常に高度なものも散見されるような傾向であり、試験についての知識が無く、初見で試験問題を見た時は何を書いてるのかさえ分からず絶望感が漂う可能性もあります。

    次に受験生の質について考察してみましょう。日商簿記検定試験は受験資格に制限は一切無く、学生・会社員・主婦その他色々な立場で色々な年齢の方が受験されます。この傾向は恐らく今も昔も変わっていないので、特に基礎学力が向上しているとは思えません。税理士試験については受験資格の緩和傾向にはあると思いますが、大きく変わった訳でもなく受験生の基礎学力が上がったということは無いと思います。

    以上の事を踏まえて客観的に分析してみましょう。

    受験生側からみた試験傾向

    受験生は、試験範囲の改訂、未出題項目が本試験に出題、法律の改正・廃止など色々な外部環境の変化に依存しており学習内容も変わるのですが、基本的に学習する項目が全体的に増えていると感じているのは皆様も実感としてあると思います。

    例えば日商簿記検定にしても、以前だと1級の範囲で出題されていたものが、2級の試験で出題されるような傾向が見られます。つまり、2級の内容が高度になり、かつ、出題範囲もそれに付随して増えている状況です。1級は1級で、2級以下の範囲は全て1級の範囲に包含されているので関係なく、更に高度な内容の出題がされている現状です。

    特に過去問を解いていらっしゃる受験生の方は、5年、10年前の試験問題を解いてみて、当時は何と内容が薄いのだろう。また、問題も解いてみて比較的簡単に感じると思います。

    そこで受験生の愚痴としては毎回のように、「当時の試験を受けていれば楽勝で受かってた」とか、「昔の受験生は今ほど勉強しないでも簡単に受かってた」、「昔の受験生はラッキー」などの声が聞かれます。

    共通した声は、「勉強量が少なくていい」「問題が簡単」が最も多いです。

    しかし、これらは10年前の受験生も同じような事を言ってましたし、一概に比較して結論づけるのは間違っているのかも知れません。それについて検証してみましょう。

    競争試験と合格率の関係

    日商簿記検定1級及び税理士試験については競争試験と呼ばれています。

    つまり、合格点は予め決められていますがこれは形式的なものであって、実質的には上位から限られた人数を点数が良い順番に選んで合格者を確定している試験なのです。

    これは、日商簿記検定1級及び税理士試験の各科目が、試験の難易度に関わらず10%前後と一定なので、実質競争試験であることを裏付けています。また、日商簿記検定2級以下についても合格率は大体安定しているので、各回の合格の可能性という視点(確率論)から言えば過去も現在も大きくは乖離していないハズです。

    何が言いたいのかというと、どんなに問題が簡単でも合格率が上がらないし、どんなに問題が難しくても一定の合格率までは合格者を出してくるので、試験傾向が難しくなったからと言っても、受験生の基本学力が同じである以上は心配はしなくて大丈夫でしょう。

    専門学校側の受験対策教材

    これは専門学校の教材に限定しなくても市販の教材でも良いのですが、試験傾向の変化に対応するかのごとく進化を続けているのです。つまり過去の試験問題が簡単に感じられるのはこれら教材の進化に拠るところが大きいのです。

    例えを出しましょう。試験勉強は未知の樹海を切り開いていくものだと仮定出来ます。

    最初は何も分からないところを進んで行くので時間も掛かるし、ノウハウも何も無いので方向も間違えたりして手探り状態で進んでいきます。

    ところが、月日を重ねるうちに先人達の努力のお陰で道を切り拓き、行動範囲も拡がっていきます。一度通った整備された道はスイスイ通れますし、未知の開拓も平行して進めて更に行動範囲が拡がるのです。これが正に試験勉強と同じ事ではないでしょうか。

    専門学校などの受験指導校は徹底的に研究しているので、過去に出題されたような問題はしっかり整備されてスイスイ通れるように、授業で知らず知らずにすり込まれているのです。だから過去問を初めて解いた時も、初めて解くような気がしないでスラスラ解けちゃうのです。難度が高い項目も簡単に感じさせてくれるこのノウハウはさすがと言わざるを得ません。

    このように確かに昔に比べて行動範囲(試験範囲)は拡がっていますが、基本的にしっかり整備された道を辿るので広い割にはあまり苦にはならないハズなんだと思います。

    本試験は、過去問が解けたからといって簡単には解けないのは理解出来たでしょうか?つまり本試験はやはり誰も目にした事がない未知の部分で戦っているからです。これは今も昔の受験生も変わりありません。本番に強い人はどんな状況でも立ち回れる柔軟な対応が出来るのではないでしょうか。

    過去問を解いて合格ラインの点数を超えたからといって喜ぶのは早いのです。

    むしろ合格ラインの点数は取れて当たり前なのです。もう道は切り拓けているわけですから。この辺りを錯覚して昔の受験生を見下したような感じになるのではないでしょうか。

    最後に私個人の意見になりますが、やはり10年前の合格に比べて現在の合格の方が確かに価値はあると思っています。それは行動範囲が広い分の知識的価値評価です。しかし、未知の部分で立ち回れる評価はイーブンだと思っています。つまり、合格者としての能力的価値は同じだと思うのです。

    10年前に合格した受験者が、10年遅れて生まれる運命になっていたとしても合格しているだろうと考えますし、逆に現在合格出来ない受験生が、10年早く生まれる運命で10年前に勉強していたとしても、なかなか合格出来ないと思っています。

    もちろん現在の教育を受けた受験生が10年前にタイムスリップした場合は無敵になるのでしょうが、それは空想の世界で現実には無理ですからね。