手形取引の処理2(日商簿記3級)

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目次と用語解説

目次

  • ガイダンス
  • 現金の処理
  • 当座預金の処理
  • 当座借越の処理
  • 現金過不足の処理
  • 小口現金の処理
  • 三分法の処理
  • 分記法の処理
  • 約束手形の処理
  • 手形の裏書き及び割引き処理
  • 有価証券
  • 固定資産
  • 債権債務1
  • 債権債務2


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手形取引の処理1

手形とは何だろう?

今回はいよいよ手形(てがた)について見ていくことにしましょう。
 日商簿記検定3級では手形取引を非常に苦手にされる方が非常に多いです。為替手形(かわせてがた)については、その傾向は顕著に現れます。今回は手形取引でも比較的やさしい約束手形(やくそくてがた)について学びます。実は為替手形は平成28年度以降の3級では出題されなくなりました。なので手形は約束手形のみ学ぶことになります。

 その前に・・・手形(てがた)とは聞き慣れない用語が出て来ました。
 これは一体どういうものでしょうか。お相撲さんのサイン?又は関所を通る通行手形ってのもあります。簿記の手形はイメージ出来ますか?いやいや、難しいですよね(笑)

 手形は小切手と同じく証券の一種で簡単に言えばお金に交換してくれる引換券です。但し、手形は銀行に持ち込んでもすぐには換金してくれません。なぜでしょうか。

 実は手形には支払期日(しはらいきじつ)と呼ばれるものが記載されていて、その期日が到来していないと換金は出来ない決まりになっています。また、支払期日は満期日(まんきび)とも言います。小切手はいつでも換金可能だったので現金と同じ扱いでしたが、手形は現金とは処理が異なります。
手形とは何だろう?

手形の振出人・支払人・受取人の関係

手形には支払期日があってその期日が到来しないと換金出来ないのは前項で学びました。約束手形を発行する人のことを振出人(ふりだしにん)、手形代金を支払う人を支払人(しはらいにん)と呼びます。そして手形を受け取る人のことを受取人(うけとりにん)と呼びます。また、ほとんどの場合は振出人と支払人は同じです。

 支払人は手形に記載された金額を支払う義務のある人。受取人はその手形に記載された金額を受け取る権利を持っている人と覚えて下さい。

 大丈夫でしょうか。つまり約束手形は、将来の一定の期日に支払人から受取人へ手形に記載された金額を支払うことを約束された証券(紙切れ)をいうのです。
受取人・支払人・振出人の関係

約束手形ってなぜ振り出すの?

約束手形は実際に扱ったことがないとイメージしにくいと思います。そもそもどうして手形を振り出すのでしょうか。売掛金で処理すればいいように思えます。実は、約束手形は支払いが長引きそうな場合に振り出すものです。

 売掛金のような掛けで決済する場合は、通常は1ヶ月とか短期決済が前提となります。これが3ヶ月先とか長引くようだと、法的拘束力の強い手形で処理をするのが実務上有効です。ほら、友人にお金を貸したとしましょう。明日返すとかいう話なら口約束でもいいでしょうけど、1年後に返すとか言われると心配になりませんか?ちょっと一筆書けよって思いませんか?

 手形も同様で、口約束みたいな売掛金・買掛金と違い、約束手形は法律に基づいて作成される強力な証券です。もし約束を破って支払いをしなかった場合は、重いペナルティ(銀行取引停止等)が課せられて実質的に会社がつぶれてしまいます。そう考えると支払う方も必死になりますよね。このように長期間に渡って支払いの決済をする場合に使うものだとイメージして下さいね。
支払手形の支払期日が長い理由

約束手形を振り出した場合の処理

前置きが非常に長くなりました(笑)。それではいよいよ手形取引の具体的な処理をみていくことにしましょう。商業手形には大きく分けて約束手形(やくそくてがた)と為替手形(かわせてがた)があります。今回は約束手形の処理を中心に学習します。

 約束手形は、手形を作る人(振出人)=手形代金を支払う人(支払人)の関係が成立します。言い換えれば手形代金を払う人が手形を発行するとイメージして下さい。手形取引の基本はまずこのパターンです。手形を発行するには銀行と当座口座を開設する必要がありますが、この辺は小切手の時と全く同じです。

 例えば商品を仕入れて支払いをする場合を考えてみましょう。この時、仕入代金分の手形を作って仕入先に渡したとします。つまり手形を振り出したわけです。それに伴い、将来の支払期日に手形金額を支払う義務が生じれば、これは債務が生じたことになります。

 この場合の勘定科目は「支払手形(しはらいてがた)」という科目を使います。 支払手形勘定は債務なので負債項目になります。つまり貸方項目ですね。買掛金、未払金と同じ性質の負債勘定です。それでは早速、よりイメージを定着させるために例題を解いてみましょう。
練習仕訳問題

解答を表示する

問1と問2は取引の内容は全く同じです。問2の問題文で「同店あて」という言葉が出ますが、これは手形取引独特の言い回しです。あてというのは宛てるの意味ですが、宛先と同じような意味合いでイメージすると○○に対して~とか、○○に向けてという意味になります。約束手形の場合は支払人から受取人に向けてという意味になりますので、手形の受取人のことを名宛人(なあてにん)とも呼びます。為替手形でも名宛人は登場しますが、約束手形の名宛人と非常に混同します。幸い為替手形は出題されなくなりましたが、名宛人は名指しされた人とイメージして覚えておくのがいいかも知れません。

約束手形を受け取った場合の処理

次は約束手形を受け取った場合を考えてみましょう。もうイメージ出来たって方もいると思うのですが比較的簡単です。そう、先程の支払手形のケースと逆になるのです。手形を受け取ると言うことは言い換えると、その手形代金を将来の支払期日に受け取る権利を取得したことになります。つまり資産(債権)が増えるってことですよ。

 この場合の勘定科目は「受取手形(うけとりてがた)」という科目を使います。受取手形勘定は資産項目になります。そう、借方科目です。こちらも売掛金、未収金と同じ性質の資産勘定です。こちらも例題を解いてイメージしましょう。
練習仕訳問題

解答を表示する

今度は手形を受け取った側の処理になります。先程の手形を振り出した場合と逆のイメージなので解けた方も意外と多かったかもしれませんね。問3は大丈夫ですか?手形に意識がいくと小切手の受取りを当座預金と解答してしまうかも知れません。問題文で「ただちに当座預金に預け入れた」と書かれていれば当座預金で正解ですが、この場合は指示がありませんから現金で解答するのが正解になります。ここは当座預金の復習もかねていますので、間違えた方は戻って復習してみて下さい。

  受取手形なんて慣れない用語が出てくると難しそうに感じますが、所詮は将来にお金をやりとりすることを約束した紙切れに過ぎません。決して難しく考えないで下さいね。
受取・支払手形と勘定科目の関係