■ 固定資産の処理 ■

【Homeに戻る】 【新・簿記講座目次】 【有価証券の処理に戻る】 【次に進む】

■ 有形固定資産とは ■

 それでは今度は有形固定資産について学習していきます。、有形固定資産(ゆうけいこていしさん)とは一体何でしょうか?

 有形って付いているくらいですから、実態があるもの。また、固定資産ですからおそらく長期に渡って保有する資産なんだろうなとイメージ出来るかと思います。実際その通りで、土地・建物・機械装置・器具備品・車両などがこれに該当します。当然有形固定資産は資産項目(借方項目)になります。ここで勘の鋭い方は気づいているかも知れません。有形があるんだから無形固定資産もあるだろうと(笑)。それは後のお楽しみにしましょう。

 さて、有形固定資産は現金や売掛金などの資産と違って特殊な処理を行います。それは、現金の価値は基本的には下がりませんよね。1年経っても10年経っても1円は1円であるはずです。しかし、例えば車みたいな固定資産は、時間の経過と共に明らかにその価値は低下していきます。100万円で買った新車が10年後に100万円で売れる事は普通はありませんね。10年後にその車が10万円で売れたとしたら、10年後に売却損が90万円発生します。しかし、その車がその10年の間に会社の営業活動に貢献していたとしたら、90万円分の目減り分を10年後に一気に計上するのではなく、費用としてその10年間で均等に配分してあげた方が何となく合理的だと思いませんか?そうした観点に立った考え方で、固定資産の目減り分を配分する手続きを減価償却(げんかしょうきゃく)と言います。つまり、固定資産は毎期少しずつ費用化していくちょっと変わった資産であるとも言えます。

有形固定資産とは

■ 有形固定資産の取得価額 ■

 有形固定資産の取得価額ですが、取得形態には購入の他、自家建設した場合、交換又は贈与などがあります。ただし、簿記検定試験では圧倒的に購入する場合が多く、基本となりますので、ここでは購入の処理について学習していきます。

 それでは、有形固定資産の取得について見ていきます。
 固定資産の取得の場合も本体部分の購入代価のほかに、色々な付随費用が発生する場合があります。例えば、運賃や登録料、据付費・関税などがこれに該当します。

 有形固定資産も棚卸資産や有価証券と同様に、これらの付随費用を取得価額に算入します。とりあえず、いつものように例題を解いてみてください。
 例題1)当社は土地を100坪1,000,000円で購入し、地ならし費用など100,000円と合わせて当座預金で支払った。

 いかがでしょうか。簡単でしたか?有形固定資産は資産と付いているくらいですので大丈夫だとは思いますが、資産項目(借方)になります。つまり資産が増加した場合は借方が増加するんでしたよね。この問題のポイントは土地のほかに地ならし費用などの費用を払っているので、この費用をどう処理するのかがポイントになります。これは取得価額として含めるんでしたよね。それを知っていれば下記の仕訳は導き出せたのではないでしょうか。

  (土 地)1,100,000 (当座預金)1,100,000

 上記の解答を見て頂ければ、土地の取得価額は購入代価に付随費用を加算したものだと分かると思います。

有形固定資産の取得価額

■ 無形固定資産とは ■

 それでは今度は無形固定資産について学習していきます。無形固定資産(むけいこていしさん)とは一体何でしょうか?

 無形固定資産とは有形固定資産とは違ってその実体は存在しませんが、企業活動の収益獲得の要因となりうる法律上の諸権利をいいます。具体的には特許権、商標権、借地権、鉱業権などが主に挙げられます。その他には、同業他社と比較しての超過収益力の源泉となる経済的実体を表す営業権が挙げられます。超過収益力の源泉とは、例えばネームバリューがある、特別な技術を持っている、立地条件がいいなどです。暖簾(のれん)とも呼びます。

 無形固定資産も有形固定資産と同様に資産項目(借方項目)になります。

 また、無形固定資産も有形固定資産と同じように減価償却を行い、毎期費用化していく資産になります。え?建物と違って老朽化する訳でもないのにどうして費用化するのですか?そうですね、おっしゃる通りです。ただ、特許権や商標権などの権利も、時の経過と共に、やはり価値は減少するだろうという観点から減価償却(費用化)を行うこととなってます。つまり、収益獲得の源泉として、その効果が及ぶ期間の費用とする訳です。難しい話になりますが、有形固定資産も無形固定資産も長期に渡って企業の収益獲得に貢献しているわけですよね。ですから、その効果が及ぶ期間に渡って、価値の減少分を費用として正しく配分してあげましょうと言うのが減価償却という手続きになるんです。

無形固定資産とは


■ 減価償却の方法 ■

 有形固定資産や無形固定資産は、価値の減少分を費用として各期間に配分すると先程の学習で学びました。これを減価償却と呼びましたが、一部の固定資産で減価償却の対象とならない資産が実はあります。例えば、土地や電話加入権などがこれに該当します。つまり、これらの資産は時の経過と共にその性質上価値が減少する資産ではないと言えるからなんです。これらの資産は減価償却を行いませんので、是非暗記して欲しいと思います。但し、検定試験においては、減価償却を計算させる場合は必ず償却方法や償却年数などの指示がありますので、ひっかけ問題としては出題されないのでご安心ください。

 それでは固定資産の減価償却を具体的に見ていきたいと思います。
 減価償却を行うには必ず次に掲げる要素が必須となります。それは取得価額(しゅとくかがく)・残存価額(ざんぞんかがく)・耐用年数(たいようねんすう)・償却方法(しょうきゃくほうほう)の4つがキーワードになります。残存価額ですが、耐用年数が到来した時のその固定資産の処分価額だとお考えください。次に耐用年数ですが、これは固定資産の使用可能期間だと考えていただいていいと思います。最後に償却方法ですが、減価償却の方法はいくつかの方法があるんです。毎期均等額を償却する定額法とか、未償却残高に一定の割合を乗じて計算する定率法などがあります。大体イメージ出来ましたか?それでは毎期の減価償却計算のプロセスを考えてみましょう。

 ①まず減価償却として費用とすべき金額は(取得価額-残存価額)となります。

 ②次にこの金額をどれ位の期間に配分するのかといいますと、その期間は耐用年数に渡って配分されることになります。

 ③最後に各期に配分される金額をどのような方法で決定するのか?その計算方法が償却方法になります。

 まあ何がともあれいつも通り例題をみて実際に解いてみましょう。

 例題1)決算時(3月31日)において、当期期首(4月1日)に購入し、使用を開始した建物について減価償却を計算しなさい。なお、建物の取得価額は500万円であり、耐用年数は50年、残存価額は1割で、償却方法は定額法で計算するものとする。

 (減価償却費)90,000 (建 物)90,000
 ※「建物」は「減価償却累計額」でも正解


 実は先程、定額法について少しだけ触れていたので、いきなりこの仕訳を導き出した凄い方もいらっしゃるかもしれません。いきなり解答出来なくて当たり前ですので、解説に入りたいと思います。この問題を見て、先程のプロセスと一緒に考えてみましょう。まず、①費用とすべき金額を算出するんでしたよね。これは取得価額から残存価額を差し引いた金額ですから、問題文より下記の計算式になるのはご理解していただけるでしょうか。

 5,000,000-(5,000,000×0.1)=4,500,000・・・①

 次に耐用年数は問題文より②50年である事が判明しました。①の金額を50年で配分するようです。最後に③償却方法ですが、これも問題文より「定額法」であることが解りますね。つまり、①の金額を50年に渡って、③の方法で配分することになります。さて、定額法についての説明ですが、この方法は毎期均等額を配分する方法なんです。検定問題でも出題頻度の高い償却方法ですので、しっかり押さえてくださいね。そうすると、毎期均等額になりますから、単純に①の金額を耐用年数で割ってあげれば答えは導き出せますよね。

 4,500,000÷50=90,000 ←これが解答になります。

 参考までに上記例題で建物を取得し、使用を開始したのが決算月の3月10日だとしたら当期の減価償却費はいくらになるか解りますか?難問ですが、研究課題としておきます。あ、ヒントは下の公式を参照してくださいね。

減価償却の計算式


■ 減価償却費の記帳(直接法と間接法) ■

 最後に減価償却費の記帳方法について学習していきます。今までの学習で固定資産の価値の減少分を費用として各期間に配分することを学んできました。その価値の減少分は、単純に固定資産の取得原価から差し引くことになるのですが、そこでの処理方法が直接法と間接法とに分かれます。その内容を見ていきたいと思います。

 直接法は減価償却費を単純に固定資産勘定から差し引くのに対して、間接法は減価償却累計額(げんかしょうきゃくるいけいがく)勘定を使用して、間接的に固定資産の実質価額を表示させる方法なのです。減価償却累計額はその名の通り、価値の減少分を費用化した金額の合計額になります。とりあえず下記の仕訳を見てください。

 ①(減価償却費)100,000 (建 物)100,000

 ②(減価償却費)100,000 (減価償却累計額)100,000

 上記の①の仕訳が直接法、②の仕訳が間接法になります。
 普通に考えれば①の処理で問題はなさそうですが、②の間接的な仕訳を行うことにより、固定資産の取得原価が試算表で一目瞭然なので分かりやすいメリットがあります。具体的には、減価償却累計額は貸方項目ではありますが、負債でも資本でもなく、難しい話になりますがあくまで固定資産の控除項目であると考えて下さい。そうする事によって取得原価と現在の実質価額の2つが読み取れるのです。繰り返しになりますが、減価償却累計額勘定は単独で存在することはあり得ず、必ず固定資産勘定とセットになって意味のあるものだとご理解ください。また、有形固定資産は間接法、無形固定資産は直接法で処理されるのが一般的です。

直接法と間接法



【Homeに戻る】 【新・簿記講座目次】 【TOPに戻る】 【有価証券に戻る】 【次に進む】


目指せ!簿記検定・税理士試験
http://www.mezase-bokizeirishi.jp/