簿記の苦手項目を克服しよう(第1回公社債の利札)

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公社債の利札

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苦手克服シリーズ第一弾は公社債の利札です。

まず、公社債とは何か?これは国、地方公共団体、企業が資金を調達するために発行する有価証券です。簡単に言うならばお金が無いから誰か貸してくれと言って発行する借用証書みたいなイメージです(国が発行するのは国債、地方公共団体が発行するものは地方債、企業が発行するのは社債です)。もちろん誰もタダではお金は貸してくれません。そこで貸してくれた期間に応じて利息を払いましょうというのが一般的です。

この利息の取り扱いですが、受け取る場合は有価証券利息という収益勘定で処理します。社債利息(費用勘定)とよく混同するので注意が必要です。社債利息は借りた側、つまり社債を発行した企業側の仕訳になります。また期限の到来した利札は現金として取り扱います。この論点は日商簿記3級から税理士試験まで幅広く出題される超重要項目です。

その他の論点として、会計期間と利息計算期間がズレていた場合の決算修正、利払日以外の日に公社債などの利付債権を売買した場合の処理など幅広い知識が要求されます。

具体的会計処理

まずは簿記3級レベルのよく出題される論点から始めましょう。期限の到来した利札の会計処理について考えてみましょう。

例題1

簡単だったと思います。期限の到来した利札は現金として扱うと同時に有価証券利息を計上します。よく似たものとして株式の配当金領収書というのがあります。公社債も株式も同じ有価証券で、利息も配当金も換金して現金になるので同じ仲間と思いがちですが、同じ仲間どころか水と油くらい違う種類のものなのです。ただ、問題上はどちらも現金として取り扱う代表的なものですよね。

さて、上記の問題を少し発展させてみましょう。例えば国債の利息計算期間と会計期間がズレていた場合はどうでしょう。

例題2

期限の到来していない国債の利札は当然換金出来ませんから現金として計上は出来ません。しかしながら、半年分の利息のうち3ヶ月は経過していますからその3ヶ月分は有価証券利息として収益計上します。翌期は期首で再振替仕訳をして借方に有価証券利息が2,500円となり、6月の利払日に5,000円を貸方に計上すれば、利息が貸方2,500円の残高となり、結果的に当期と翌期に2,500円ずつ期間按分され適正化されます。

さて、今度は売却した場合の仕訳を考えてみましょう。公社債は満期まで保有する事もあれば、途中で売買する事も可能です。利払日に売却した場合は仕訳はシンプルです。

例題3

国債の売却部分と利息部分をあえて分解していますが現金はまとめてもよいでしょう。公社債は売却時にかならず利息は清算する決まりになっているのであえて分解してみました。例え利払日に売却していなくても、経過利息は売却時に清算して授受する決まりになっていますので2行目の仕訳は売却時には必ず発生します(利息がある前提ですが)。また、抜けやすい仕訳なので留意しましょう。

例題4

それでは更に発展させて利払日以外の日に売却すればどうなるのでしょうか。更に国債の帳簿価額と違う金額で売買した場合はどう処理するのでしょうか。先の例題でも述べましたが、公社債の売却時には経過利息分の清算も合わせて行います。これは慣習ですから正しい経過利息を計算して清算します。言い換えると利息の清算に誤差は生じません。しかし、公社債の売却は帳簿価額よりも高い金額、又は低い金額で売買される事があります。その差額は売却損益として計上しなければなりません。

例題5

先程の仕訳を琵琶湖商事、つまり購入側の仕訳について考えてみましょう。公社債を利払日以外の日で購入した場合は、解答のように借方に収益勘定である有価証券利息が計上されます。つまり一時的に収益のマイナス計上という矛盾した状態になります。しかし、利払日が来れば利息計算期間分の収益として有価証券利息の貸方に計上されますので相殺して結果的に購入日から利払日までの利息が貸方残高で計上される事になります。

購入してから利払日までに決算を迎えた場合はどうでしょうか。少し考えて見ましょう。損益計算書に有価証券利息のマイナスとして計上されると思いますか?答えはそうはなりません。例題2で決算修正を行ったと思いますが、当期に対応する経過分の利息は未収収益として見越し計上されますので、相殺されて購入日から決算日までの経過利息分が有価証券利息勘定の貸方に残る事になります。

つまり、購入時には前回の利払日から購入日までの(相手分の)利息を借方(マイナス)計上しますが、決算日には前回の利払日から決算日までに対応する利息を未収計上しますので必ず貸方残になります。ゆえに損益計算書上で有価証券利息がマイナスになる事はあり得ません。