簿記の苦手項目を克服しよう(第2回本支店会計)

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本支店会計

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そんな訳で今年は本支店会計が熱いんじゃないかと思ってます(笑)

本支店会計、ややこしいですよね。苦手というよりは嫌いって方が多いのではないでしょうか。

そもそも会社の商品A倉庫からB倉庫に動かしたところで簿記上の取引には該当しませんが、これが本店から支店に動かしたところで簿記上の取引に該当するのか最初に疑問に感じるところではありますが、そんな難しい事は置いといて、本支店会計では未達取引の仕訳は超重要ですよね。つまり、ここを間違うとかなりの打撃を食います。未達取引は最初に手を付ける項目ですし、まあ、時間を掛けてもここは慎重になるところでしょう。

今回は本支店会計の細かい処理よりも大枠の考え方を気楽に読んで頂ければと思います。

本支店会計の期末修正事項

本支店会計は淡々とパターン的に処理して解答するので、一体何をやっているのか分からない受験生も多いのではないかと思います。まず、どうして本店と支店とに分けて独立した会計を行うのでしょうか。これは支店独自の業績を数字で表したいのです。本店も支店も同じ会社内ですが、企業では本支店間だけでなく、営業所、店舗、各部署同士で激しく競争し、また、刺激し合って業績を伸ばしていきます。競争ですから勝ち負けは当然ついて回るのですが、その具体的な判断材料となるのはやっぱり数字なのです。つまり、各々独立して成績表を作りたいだけの話なんですね。

では、なぜ独立して成績表を作るのが問題なのでしょうか。それは内部で物をこねくり回して(内部取引といいます)収益やら費用やら発生させているのが一番の問題です。なにせやりたい放題出来ますから。ちょっと売上高を多く見せたければ、会社内部で物をこねくり回せば打ち出の小槌のように売上高が増えますもんね(笑)まあ、さすがにそれはふざけんなよって事で決算において修正している訳です。受験生が解いているのは正にここなのです。

期首の本支店勘定

さて、期首の時点で仮にこのような本店と支店があったとしましょう。簡単な取引で本支店会計を分析してみましょう。

例題1

まずは貴重な現金を支店に送りましたよ。この場合の本店・支店勘定はイメージ的には債権・債務を表しています。つまり支店勘定は貸付金、本店勘定は借入金(資本金とも言えますが・・・)とほとんど同じイメージに感じませんか?本支店間取引では、必ず本店では支店勘定を使いますし、支店では本店勘定を使用します。また、本店勘定と支店勘定は必ず一致します。

例題2

お金が無いので掛で商品を購入してきました(笑)

例題3

その商品を早速支店へ発送しました。仕訳はこんな感じになります。

この場合の本店・支店勘定はイメージ的には売掛金・買掛金のイメージです。債権・債務ですね。「支店へ売上」勘定と「本店から仕入」勘定も本支店取引独自の勘定科目で、必ずペアになって登場します。

最終的にこの本店・支店勘定と「支店へ売上」・「本店から仕入」勘定は、内部でこねくり回して作られた債権・債務と収益(売上)・費用(仕入)ですから修正して打ち消さないといけません。これが本支店会計の大きな目的になります。

例題4

まあ、とりあえず支店は本店から仕入れた商品を外部へ140円で売り上げました。特に断りがない限りは仕訳は三分法で行いますね。

本支店会計イメージ図

今までの一連の流れを図解にしてみました。本店、支店独自で財務諸表は作りますが、あくまでも内部資料として作っているだけで、真の目的は一企業としての会社の財務諸表を作成することです。つまり外部から仕入れた100円と外部に売り上げた140円で利益が40円ありましたというのを明示しなければいけないのです。なので内部同士の収益(売上)・費用(仕入)や債権・債務は無視して作成します。

本支店会計の試算表

仮に先程の例題の取引しか行っていないとします。すると本店、支店はこのような試算表になりました。基本はこれを合体させるのですが、赤い部分は無視して作るのが何となく理解出来るでしょうか。

本支店合併財務諸表

それでは実際に合体させて見ましょう。先程の赤い部分(内部取引部分)は無視してそのまま単純に合体させます。この合併財務諸表は、期首の状態から本支店を無視した例題2、例題4の取引だけを反映した場合と全く同じになるのを確認してみて下さい。本支店会計の目的は、本支店間の取引を無視すると言っても過言ではないでしょう。

それではこれで本支店会計の目的っぽいものが見えてきました。しかし、もうひとつ重要な論点があるのです。本支店間の債権・債務や収益(売上)・費用(仕入)を無視して合体させるだけでは問題があるのでしょうか。実はあるのです。

本支店会計イメージ図(商品を外部に売らなかった場合)

三分法で商品売買を処理している場合、期末に売れ残った商品は費用とはしないで繰越商品として翌期に資産として繰り越しましたよね。この繰り越した商品に内部取引による利益が乗っていた場合は非常にまずい事になるのです。本支店間の債権・債務、収益・費用を相殺して無視するだけではダメだったのでしょうか。

何が悪いのかは図解をみてもらった方が理解が早いでしょう。

支店に商品が売れ残った場合の勘定図

支店は外部に商品を売っていないので手元に残った状態になります。

本支店合併財務諸表2

赤い部分をまた無視して合併してみましょう。恐ろしい事に商品を売ってもいないのに利益が20円も出ています。これは本来100円で仕入れた商品が、支店に移動した事で120円の価値になってしまった未実現利益部分なのです。もちろんこれは利益として認められません。

このように支店へ利益を付加して送付した場合、支店側で売れれば全く問題は無いのですが、売れ残った場合は未実現利益が問題となるのです。

内部利益控除の仕訳

この何もしていないのに増えた未実現利益は当然一企業の財務諸表に反映させる訳にはいきません。そこで上図のような仕訳で調整しているのです。何か無理矢理って感じがしないでもありませんが辻褄は合っています。ただ、正式な財務諸表ではこれらを相殺して下記のように表示します。

本支店合併財務諸表3

結論として、本支店間の取引は基本的に無視。やっぱり企業内でこねくり回した取引は簿記上の取引として認められないのでしょう。簿記の問題では最初に未達取引をやって、本支店勘定及び本店より仕入、支店へ売上勘定を合わせる事に集中しますが、これらは合併財務諸表を作成する上では無視する項目なので、それを踏まえて解答戦略を考えるのがイイかもしれません。むしろこれらの相手勘定科目の増減に注意を払うべきでしょう。

あとは商品に含まれる未実現利益にさえ気を付けていれば本支店会計は大体解けるものではないでしょうか。本支店会計の問題では合併財務諸表を作成する問題が一番オードソックスだと思いますが、基本は単純に合算させるだけです。それに内部取引を無視する事と、棚卸商品に含まれている未実現利益に注意を払えば部分点はかなり拾えると思います。