■ 有価証券の処理 ■


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■ 有価証券とは ■

 それでは有価証券について学習していきます。有価証券と言われてもピンとこないかもしれませんが、有価証券(ゆうかしょうけん)とは一体何でしょうか?

 主に国が発行する国債、地方公共団体が発行する地方債、企業が発行する株券や社債券などが挙げられます。また、有価証券は資産項目(借方項目)になります。今まで学習してきた「現金」「受取手形」「売掛金」も資産項目でしたね。

 それではどうして企業は有価証券を保有するのでしょうか。色々な目的があるのですが、企業は商品を購入してそれを売ることによりお金を儲ける、つまり利益を得る事が主な目的です。ただ、資金的にゆとりが出来るとそれを運用してもっと増やしたいと考えます。少なくてもお金を会社の金庫で寝かすよりも銀行に預けた方が利息が増えたりします。有価証券も同様の考え方で、購入して利息を得たり、売買して差額を得たりしてより儲けようと努力するわけです。企業の財テク活動みたいなものです。その他、子会社などを支配目的で保有することもあります。

■ 有価証券の取得(移動平均法) ■

 簿記検定で出題される有価証券は、株式・社債が最も多くて、ほぼ有価証券と言えばこの2つだと思います。また、有価証券の出題には主に発行する立場と取得する立場の2種類あるのですが、この項目では取得する側の場合について学習していきたいと思います。ちなみにその他の有価証券としては、受益証券・出資金・転換社債・新株引受権付社債なども出題されることもありますが、ここでは割愛させていただきます。

 それでは、有価証券の取得について見ていきます。
 有価証券の取得形態には主に新株を発行する際に現金等を払い込んで取得する「払込」、取引市場で現金等を支払って取得する「購入」の2つが基本的な取得形態になると思います。また、有価証券を取得する際に気を付けたいのが、取得価額の決定です。取得には手数料などが発生する場合があり、そう言った付随費用も取得価額(資産)に加算します。とりあえず例題を解いてイメージして見てください。

 例題1)当社はA社株式を1株当たり500円で1,000株購入し、手数料5,000円と併せて現金を支払った。

 いかがでしょうか。有価証券を購入しているので資産項目である有価証券勘定(借方)が増加します。反対に同じく資産項目である現金を支払っているので、現金勘定(貸方)の減少となります。ただ、この問題では手数料(費用)が発生してますので、通常ですと費用項目の発生として借方に手数料勘定が増加するのですが、取得の際に要した購入費用は取得価額に含めるという決まりがあります。特に指示の無い場合は「商品」や「固定資産」についても同じことが言えますので、あまり深く考えずに覚えてください。

  (有価証券)505,000 (現 金)505,000

 上記の解答を見て頂ければ、資産である有価証券勘定に費用である手数料が含まれているのが分かると思います。

有価証券の取得価額

 さて、有価証券の取得にはもう一つ大切な事があります。それは同じ銘柄の株式などを取得した場合に、1株当たりの単価を把握する事です。なぜそんな事を把握するのかと言いますと、この後の話になりますが、売却や期末の評価損益の計算の際に重要になるからです。

 具体的な計算方法なのですが、主に移動平均法や総平均法があり、特に簿記検定などでは移動平均法の問題が圧倒的に多いと思います。そこで移動平均法について説明します。移動平均法とは同じ銘柄の有価証券を取得の都度、平均単価を計算する方法なのです。

 つまり、同一銘柄の有価証券を取得した時に、既に保有している有価証券の帳簿価額に新しく取得した取得価額を加算した金額を、既に保有していた有価証券の数と取得した有価証券の数を加算した金額で除した金額を言います。

 文章にしても今ひとつイメージ出来ないと思いますので、例題を解いてください。

 例題2)当社は例題1に引き続きA社株式を1株当たり600円で1,000株購入し、手数料5,000円と併せて現金を支払った。

  (有価証券)605,000 (現 金)605,000

 仕訳は大丈夫だと思います。それではA社株式の単価計算を見ていきましょう。例題1で初めてA社株式を取得したと仮定すると、その時点でのA社株式の1株当たりの単価は505,000円÷1,000株=505円になります。

 そして、そのまま例題2まで売買が無かったと仮定すると、例題2の時点で新たに単価計算をする必要があるのです。移動平均法の計算方法で計算しますと下記の式で算出します。

 (505,000円+605,000円)÷(1,000株+1,000株)=555円

 つまり、例題1の時点では1株当たり505円でしたが、例題2の時点では1株当たり555円になるのです。

有価証券の取得価額2

■ 有価証券の売却 ■

 さて、それでは有価証券を売却したときの処理について見ていきます。一番最初にお話したように、財テクで有価証券を運用して儲けようと考えていれば、当然どこかで売却して利益を得ようとします。反対に見込みに反して売却によって損することも当然あり得ます。目的は色々ですが、ここでは短期的な売買を前提にした有価証券についてお話していきます。

 有価証券を売却した場合には、有価証券は資産項目ですから仕訳上、資産の減少として貸方に有価証券がくることがイメージ出来ると思います。そして有価証券を売却することによって得られるのは、現金や当座預金などの現金同等物であり、資産項目の増加として借方にくることがイメージ出来ると思います。そこで売却差額が発生したときは、収益又は費用として把握することになります。イメージとしては下記の通りになります。

 ● 売却によって得した場合の仕訳

 (現金など)××× (有価証券)×××
             (売却益) ×××


 ● 売却によって損した場合の仕訳

 (現金など)×××   (有価証券)×××
 (売却損) ×××


 イメージ出来ましたか?正確には売却によって得をした場合には差額は収益勘定である「有価証券売却益」勘定で処理し、反対に損した場合には費用勘定である「有価証券売却損」勘定で処理します。

 さて、有価証券を売却することによって問題になるのが、有価証券の売却原価の計算なのです。保有している有価証券を全て売却した場合には帳簿価額を売却原価として計算すればいいのですが、例えば保有しているうちの一部だけを売却した場合などは、原価をどうやって計算するのか考える必要があります。

 具体例を挙げます。最初にA株式を1株10万円で購入したとします。後日同じA株式を1株100万円で購入したと仮定します。現在2株保有していますが、更に後日に最初に購入したA株式を90万円で売却したとしましょう。普通で考えたら売却原価は当然10万円ですから80万円得した計算になります。逆に後から購入した株式を売却した場合には原価が100万円ですから10万円損した計算になります。このように1株ごとに個別管理出来れば正確な計算は出来るのですが、実際に多くの有価証券を日々売買してるととても手間が掛かって実務的ではありません。また、内容的には全く同じ株式ですから、そこまで細かく管理する必要もありませんね。この例では金額が極端でしたが、大体でイメージ出来ましたでしょうか。

 そこで、出来るだけ簡素化した計算方法が先ほどお話した総平均法や移動平均法になるのです。これらの計算方法は有価証券を売却した際の売上原価を計算する方法だったのです。ですから、厳密には単価計算は売却時に計算するものです。ただ、試験で圧倒的に出題される移動平均法については取得ごとに単価計算をしていた方がよいと思います。

 最後に例題を解いてみましょう。

 例題3)下記の番号順に有価証券に関する仕訳を行いなさい。有価証券の売却原価の計算は移動平均法により計算すること。

 1.H社株式を1株800円で2,000株購入し、付随費用1万円と一緒に現金で支払った。

 2.1のうちH社株式を1株900円で1,000株売却し、当座預金とした。

 3.H社株式を1株850円で3,000株を追加購入し、付随費用15,000円と一緒に現金で支払った。

 4.現在保有しているH株式のうち1株830円で1,000株売却し、当座預金とした。


 1及び3が購入取引、2及び4が売却取引になります。全て同一銘柄株式なので、追加購入の時点で1株当たりの単価が変わります。下記に解答仕訳を示しておきます。いきなりは難しいかもしれませんが、解答を見ながらイメージして下さい。

1.(有価証券) 1,610,000 (現 金) 1,610,000
2.(当座預金) 900,000 (有価証券) 805,000
  (有価証券売却益)95,000
3.(有価証券) 2,565,000 (現 金) 2,565,000
4.(当座預金) 830,000 (有価証券) 842,500
  (有価証券売却損) 12,500  

 いかがでしょうか。単価計算出来ましたか?2.では売却益が出て4.では売却損が発生します。

 1.所有有価証券 2,000株
   帳簿価額 805,000円
   1株単価 1,610,000÷2,000株=805円

 2.所有有価証券 2,000株-1,000株=1,000株
   売却原価 805円×1,000株=805,000円
   帳簿価額 1,610,000円-805,000円=805,000円

 3.所有有価証券 1,000株+3,000株=4,000株
   帳簿価額 805,000+2,565,000円=3,370,000円
   1株単価 3,370,000÷4,000株=842.5円

 4.所有有価証券 4,000株-1,000株=3,000株
   売却原価 842.5円×1,000株=842,500円
   帳簿価額 3,370,000円-842,500円=2,527,500円

 お気づきになられたかもしれませんが、有価証券の売買損益の計算は分記法の考え方で処理してます。

■ 有価証券の期末評価 ■

 それでは決算時における有価証券の評価について見ていくことにしましょう。有価証券には時価というものが存在するのですが、売買を目的とした有価証券を保有している場合には、決算時の時価を貸借対照表価額とし、その差額があるときは損益として計上しなければならない事になってます。

 例題1)決算時においてB社株式(1株当たり単価700円、所有株式数1,000株)700,000円を保有しているが、決算時における同株式の1株当たりの時価は500円である。

 (有価証券評価損)200,000 (有価証券)200,000

 このように有価証券の帳簿価額と時価との間に差額がある場合には損益を認識して、貸借対照表価額を時価で計上することになってます。例題1では決算時における1株当たりの時価が200円下落しているので、20万円の評価損が出ます。また、貸借対照表価額は50万円になります。

 例題2)決算時においてB社株式(1株当たり単価400円、所有株式数1,000株)400,000円を保有しているが、決算時における同株式の1株当たりの時価は500円である。

 (有価証券)100,000 (有価証券評価益)100,000

 今度は時価が帳簿価額を上回ってる場合です。先程とは逆のパターンですが、考え方は一緒で、時価をもって貸借対照表価額とするので差額100円×1,000株=10万円を有価証券勘定に加算します。そしてその差額10万円は評価益勘定として認識するのです。

 (参考)金融商品に係る会計基準に伴い、平成12年4月度開始事業年度から有価証券の時価会計が導入されました。それ以前は決算時に有価証券の帳簿原価が時価を上回った場合に評価益を計上することは認められませんでした。

有価証券の期末評価



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