特殊仕訳帳を使った残高試算表解法のテクニック

今回の第135回日商簿記検定の第2問の予想に特殊仕訳帳を使った残高試算表作成問題を予想していますが、特殊仕訳帳を苦手にしている受験生は非常に多いです。
理由は色々あると思いますが、普通仕訳帳から勘定に転記する一般的な流れに比べて、仕訳帳がいくつも存在する事と、勘定記入のタイミングがバラバラなので混乱する事、二重仕訳と二重転記の問題でややこしいと感じているのではないかと思います。

また、特殊仕訳帳の問題で満点を取ろうとするとかなりの時間を要することから実践的にプレッシャーが掛かりやすい理由もあります。
今回の記事では、第2問を後回しにして時間が足りなくなって解くのにあまり時間を掛けられない。とりあえず部分点だけでも確保したいって方を対象に読んで頂ければと思います。

少し長くなりますが、どうぞお付き合い下さい。

まず、特殊仕訳帳は仕訳帳です。普通仕訳帳と同じで仕訳を記入して勘定に転記します。
これが今イチ分かっていない人が意外といるのかも知れません。

まあ、そんな何も分かっていないあなたにも、そこそこ点数を拾えるようなテクニックを紹介しましょう。
まず、本試験問題を使って実際に解いてみますね。ちなみに残高試算表で各勘定科目の数字を埋める問題の解法テクニックですので、その前提で宜しくお願いします。

残高試算表を作成するという事は、結局勘定科目に正しく転記されて正しい集計が行われていることを前提をしています。つまり、合わせやすい勘定科目から解答して部分点を拾いましょうというのが狙いです。

前回出題された第131回を考えて見ましょう。

まず一番最初に普通仕訳帳に目を向けます。そして売上・仕入以外の収益・費用(P/L項目)に着目します。4/1は推定ですが、先に答えを言うとこの科目は支払利息です。しかし、推定箇所は後回しスルーでいいです。次に手形売却損、固定資産売却損、給料がP/L項目になります。このうち手形売却損金額1,200円も判明してすぐに把握出来ます。
また、普通仕訳帳の一部が省略されていると注記がありました。この省略されている部分は必ず確認しないといけません。小口現金に関する項目のようです。別の資料に小口現金出納帳の資料があります。小口現金出納帳は補助簿としては使用していますが、特殊仕訳帳としては使用していないと最初の問題文に書いていました。つまり小口現金に関する仕訳は普通仕訳帳でするしかないのです。その仕訳が普通仕訳帳より省略されていますが、大体推測出来るのではないでしょうか。一部推測な箇所もありますが、P/L項目で旅費交通費12,100円、通信費7,200円、雑費1,400円はすぐに把握出来ます

次にこれら4つの科目が特殊仕訳帳で記入されていないか調べます。
このの場合、必ず優先順位は普通仕訳帳から特殊仕訳帳です。徹底しましょう。
また、特殊仕訳帳を調べるにあたっては現金(当座預金)出納帳の諸口欄に着目します。その欄以外に売上・仕入以外のP/L項目が記載される事はないと思って大丈夫です。

当座預金出納帳の諸口欄に記載されているP/L項目は有価証券売却益75,000円、給料124,000円の2つです。先の4つの勘定科目には該当しませんね。なのでこの4つの科目は確定です。

この時点で問題用紙に、

手形売却損 1,200

旅費交通費欄¥12,100 通信費欄¥7,200  雑費欄¥1,400

このようにマーカーで塗りつぶしてみましょう。

あの、念のために書きますが、現金(当座預金)出納帳を特殊仕訳帳として使っていなければ、当然普通仕訳帳に記載されているハズですから無視して下さいね。そう、この第131回の問題の小口現金出納帳が該当します。問題ではわざと普通仕訳帳から省略して受験生を釣ろうという魂胆が見え透いてますよね(笑)

次は逆です。つまり特殊仕訳帳から普通仕訳帳のチェックです。この諸口欄に記載されている2つのP/L項目を確定したいのですが、普通仕訳帳には記載されていないか念のために確認です。
ところが給料は何か見覚えあります。そう、先程は金額が不明だったのでスルーにして飛ばしましたが、給料は普通仕訳帳にも記載がされていました。しかも親勘定の当座預金と絡んでいそうです。これは二重に計上されている可能性大で、計算がややこしいので後回しにします。有価証券売却益に関しては普通仕訳帳には記載されていませんでしたから確定させましょう。

有価証券売却益 ¥75,000

塗りつぶして確定させます。

普通仕訳帳→特殊仕訳帳、特殊仕訳帳→普通仕訳帳の往復ビンタでチェックして確定しましょうね。

この時点で5つの勘定科目が確定しました。これらを解答用紙にダイレクトに記載します。
本問の場合、P/L項目は前期末の残高は0円で加減算する手間も無いので電卓不要で埋められます。

2番目に確認するのはマイナーなB/S科目に目を向けます。
繰越商品、固定資産や減価償却累計額、貸付金、借入金、立替金、預り金、資本金など、問題を一読して頻繁に取引してなさそうな科目に注目します。何故なら、動きが少ないほど集計が楽でミスも起こらないからです。

この問題だと、繰越商品資本金は問題から動きがなさそうです。この問題に限らずどの問題でもこの2つは動きがないのがほとんどです。よく調べると土地貸倒引当金借入金も取引がなさそうで動いていません。これはいただきマンモス以外の何物でもありません。そのまま前期末残高を4月末残高に転記してガッツリいただきましょう。

ここまで電卓不要で10個の勘定科目が埋められました。あの、まだ素読みの段階ですからね!問題を解くのはここからだと思って下さい(笑)こんな簡単なものに配点が振られるのかって心配もあると思いますが、問題が難しくて点数が伸びない場合はこれらに配点が来る可能性は十分にあります。また、ある程度解答用紙が埋まっていると精神的に安心感が生まれるのですよ。

さあ、ここから本格的に問題を解き始めましょう。
資産表作成の問題は第3問の総合問題でもそうですが、解きやすい科目の数字を順不同で解答出来るって事です。順番に解く必要は全くないのです。自分だったらまず推定が絡むものは後回しにします。

先程の流れでマイナーな動きの少ないB/S項目から手を付けます。しかも推定不要なものから行きたいです。
やっぱり普通仕訳帳から着目します。例えば建物からいきましょうか。ただ、この問題では簡単ではありません。何故なら相手勘定科目に特殊仕訳帳の親勘定が含まれているからです。この場合は難しいので後回しにします。簡単なものから手を付けるのが正解です。

次に減価償却累計額を見てみましょう。これは相手勘定科目は建物で特殊仕訳帳とは無縁です。普通仕訳帳に記載されている科目で相手勘定科目がノーマルの場合は100%勘定に転記して増減させます。
(注)正確には、相手勘定が特殊仕訳帳の親勘定でも、普通仕訳帳に載ってる科目は100%勘定に転記します。でもその場合は特殊仕訳帳との二重記載で調整に気を遣うし、時間も使うので後回しにしましょう。

次に特殊仕訳帳にも記載されていないか確認します。まあ、こんなマイナーな科目は大抵の場合は動きが少ないのでほとんどこれだけって場合が多いですが、念のため確認します。確認する場合は現金(当座預金)出納帳の諸口欄のみでほぼ大丈夫です。特殊仕訳帳に減価償却累計額はどこにも動きがありませんでした。

これで、解答欄の4月中の取引高の(借)336,160と、4月末残高(貸)360,000は埋められます。
同じような要領で普通仕訳帳のマイナーなB/S科目、従業員立替金所得税預り金を求めて見ましょう。あ、固定資産売却損は推定なので後回しにしましょうね(笑)

何度でも言いますが、普通仕訳帳に記載されている科目で相手勘定が特殊仕訳帳の親勘定で無い場合はその場で転記して合わせにいきましょう。

従業員立替金、所得税預り金は普通仕訳帳以外の特殊仕訳帳には仕訳がされていませんので、動きはこれだけで簡単に埋まります。※立替金や預り金は他に当座預金などで払っている場合がある。

次に特殊仕訳帳に目を移してマイナーなB/S科目がないか調べて見ましょう。
当座預金出納帳の諸口欄に注目です。建物がありますが、普通仕訳帳のところでも触れましたが二重仕訳問題もあってややこしそうです。飛ばしましょう(笑)
次に売買目的有価証券があります。これは動きが少なそうで美味しいですね。この勘定科目は、普通仕訳帳に記載されていましたか?されていませんでした。されていないって事は少なくても2つの仕訳帳で二重に記載される可能性はゼロです。つまり簡単に解答出来るってことです。この場合の売買目的有価証券200,000円は勘定科目に転記します。相手勘定は当座預金の借方なので、売買目的有価証券の200,000円は貸方ですよ。つまり4月末の最終値は127,000円になります。
最後に小口現金ですが、これも推定になっているので飛ばします。推定箇所は全部飛ばします。

いかがですか?比較的簡単に13箇所も解答欄を埋める事が出来ました。

3番目に目を向けるのは特殊仕訳帳の親勘定です。
つまり、当座預金、仕入、売上、支払手形(貸方)、受取手形(借方)です。比較的簡単に求まります。
但し、この問題の場合は仕入以外は全て推定箇所があるので簡単ではありません。。。

まず簡単な仕入帳に着目しましょう。特殊仕訳帳なので仕訳帳です。転記は当然行います。
転記は行いますがまずは親勘定のみ行うのが早く解答欄を埋める事が出来ます。仕入帳の相手科目である当座預金72,000円、買掛金247,000円、支払手形172,000円も当然各勘定に転記は行いま・・・ああ、相手勘定の当座預金と支払手形(貸)は特殊仕訳帳の親勘定なので転記はしませんね。買掛金247,000円のみでした。それらは置いといて、まずは親勘定の仕入勘定への転記のみ考えます。これは相手勘定の合計額をそのまま転記します。つまり、72,000+247,000+172,000=491,000円です。これをそのまま仕入勘定の借方に転記するだけ。簡単でしょ?

このように特殊仕訳帳の親勘定は相手勘定の合計値をそのまま転記するだけで解答出来ます。

いよいよ他の特殊仕訳帳の親勘定を求めますが、お馴染みの特殊仕訳帳間の二重仕訳について考えます。
さすがにご存じとは思いますが、特殊仕訳帳と特殊仕訳帳で同じ取引が二重に記載されていることを指します。これは回避出来ない問題ですが、逆にこの問題を利用して空白になっているカッコを埋める事が可能です。

・当座(現金)仕入
・当座(現金)売上
・手形仕入
・手形売上

↑↑↑↑↑↑↑↑  絶対暗記  ↑↑↑↑↑↑↑↑

この4つは二重仕訳の中でも基本中の基本のものなので絶対に覚えて下さい。
この問題ですと、当座預金出納帳の売上欄と仕入欄は不明ですが、上記を知っていれば埋める事が出来るでしょう。つまり仕入帳の当座預金欄と売上帳の当座預金欄からそのまま数字を持ってくればいいのです。同様に支払手形記入帳の仕入欄も不明ですが、仕入帳の支払手形欄より簡単に求まりますよね。ただし、手形売上はこの問題の場合は簡単には求まりません(どちらの特殊仕訳帳も空白)ので後回しにします。

でも、当座預金出納帳の借方合計と支払手形記入帳の合計は求める事が出来ますよね。
それぞれ計算すると、当座預金(借)1,137,800円、支払手形(貸)360,000円です。当座預金は貸方の小口現金の欄が不明なので最終値はまだ求まりませんが、解答にはもう一息のところまでになりました。支払手形も借方の金額の集計がまだですから最終値まで求まりませんが、大分前進しました。

ここまではテクニックのみで求めてきましたが、この先はあなたの知識とセンスに掛かっています。
でも多分闇雲に解き始めるより、ここまでの解答で全体像がおぼろげながら見えてきたので閃きやすいはずです。何と言ってもそこそこ解答欄を埋めた安心感もあります。

ここから先の解答はパズルを解くようなもので、色々な解法があるのであえて細かく触れません。


でも例えば、普通仕訳帳の4/1の仕訳なんかは経過勘定項目の振替仕訳なんだろうな・・・と閃けば相手勘定が支払利息で、金額も未払利息の前期末残高の2,500円だと気付くと思います。普通仕訳帳の支払利息が分かれば相手勘定が親勘定でないですから100%転記ですよね。特殊仕訳帳にも支払利息の記載はないのでそのまま求まります。

小口現金出納帳の消耗品費が空欄でしたが、解答欄の4月中の取引高を見れば26,500円と出ています。これは気付くかどうかのセンスの問題ですが、気付けば普通仕訳帳に省略された仕訳も見えてきませんか?消耗品費は5,800円なんだろうなと解答出来ると思います。また、全体の仕訳が分かれば先程の当座預金出納帳の貸方合計も求まります。定額資金前渡制度で使った分を小切手で補充しているのだから、諸口欄の小口現金は26,500円と判明しますからね。

もっと頑張ると、先程の支払手形の貸方は求まったけど借方は求まるかな~。と思って各帳簿の借方だけよく調べたら当座預金出納帳の諸口欄にそのまま載ってるじゃないか。これで支払手形の最終値も求まります。売掛金や買掛金の集計も大変そうなので後回しにしたけど、よく見たら推定箇所はなくて単純に電卓叩くだけ。意外と簡単でした。

本問の場合、ここまでは頑張って埋めて欲しいと思います。

一部当座取引の二重仕訳の知識を持っていれば給料の額も簡単に求まります。
建物の仕訳も同様に求められるのでドンドン解答欄が埋まります。このように一部当座取引について普通仕訳帳に全体記帳している場合は少し難易度が高いので、場合によっては無視してその他を合わせにいっても戦略上は良いと思います。でも特殊仕訳帳間の二重取引については知識として持っていないと合格点は取れないと思います。

この問題で一番難しいと思われるのが、売上と受取手形を求める数字だと思います。
これは二重仕訳金額控除より逆算しないと解けないので無視しても良いとは思います。

最後にまとめます。
解いた時間に比例して点数を伸ばすなら下記の順を参考にしてみて下さい。

1.普通仕訳帳に記載された売上・仕入以外のP/L項目から合わせに行く。但し、二重仕訳、推定箇所は後回し。

2.次に特殊仕訳帳に記載されたP/L項目を合わせに行く。現金(当座)預金出納帳の諸口欄に注目!

3.動きの全くないB/S科目の数字を合わせに行く。

4.動きの少なそうなB/S科目の数字を合わせに行く。

5.特殊仕訳帳の親勘定の合計値を算出する。特殊仕訳帳間の二重仕訳は完璧に覚える事。

6.特殊仕訳帳の特別欄の勘定科目などで、集計可能なものを合わせに行く。

7.後回しにした推定箇所で解けそうなものから手を付ける。

8.一部当座取引など二重仕訳に関わる部分を推定して該当科目を合わせに行く。

こんな感じではないでしょうか。
日商簿記2級の戦略として第2問を一番最後に解く人は多いと思います。
是非とも参考にしていただいて良い吉報をお待ちしてますね。

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